Hashiru Ueda | Exhibition | Gallery Tsukigime | ギャラリー月極

Hashiru Ueda
"富より健康"
2022/11/5 〜 2022/11/20

富を求めて生きることは、本当に幸せなのだろうか
イラストレーター上田走が描く生きることへのメッセージ

この度、月極ではアニメーション制作ユニット「OHRYSBIRD」の一員であり、イラストレーターとしても活動する上田走による個展『富より健康』を11月5日(土)から11月20日(日)まで開催致します。

2021年に本ギャラリーキュレーションのもと開催された初の個展「シャリバテ」に続く、2度目の個展となる今回は、上田の趣味である登山の際に訪れた長野で飲んだコーヒー牛乳の瓶に書かれた「富より健康」という言葉から生まれた展示。彼はこの言葉を目にして以来、「富を求めて生きることは、本当に幸せなのだろうか」と考えるようになりました。

そして、上田は私たちが生活する上で、どうしても切り離せない数々の数字を気にして生きていることを知るのです。それは給料、税金、年金、ローン年数などのお金のことはもちろん、他にも年齢や労働時間、体重や体脂肪率、更に登山のコースの距離やザックの重さなど、言い出すと切りがないほど多くの数字が発するストレスと生活をしています。現状で暮らしていくしかない。我慢も必要。どうにかこうにか生きていくしかないのです。

でも…「すべて大切なことだけど、暮らしをないがしろにしているようで、腹が立つ」。一杯のコーヒー牛乳の瓶に書かれた言葉は、上田に気づきを与えたのです。

個展『富より健康』は、そんな上田の目覚めがテーマの展示。人生は面白おかしく生活するためにあるのです。自分を大切にするためにあるのです。たくさんの数字が気になるが、暮らしそのものに集中していくことが大切なんです。

上田の作品の象徴でもある「天狗」と「日本狼」がモチーフの作品に加え、健やかさの象徴として「内臓」をモチーフにした作品が並ぶ本展。何のために働いているのだろう。何のために生きているのだろう。「富より健康」=どれだけ富を求めて生きることから、切り離して幸せを見いだせるか。その答えは、きっと本展の中にあります。ぜひ、この機会にご高覧頂けますと幸いです。

[Profile]
上田 走

1977年生まれ、神奈川県出身。 アニメーション制作コンビ OHRYSBIRD として活動中。「シャキーン」「みんなのうた」E テレ等、 テレビ番組を中心にアニメーションを手掛けている。その他イラストレーションワークとして Sasquatchfabrix. とのコラボレーション「Kamisabiru」冊子、グラフィック提供など。 趣味の山登りを通してニホンオオカミや天狗に魅了され、作品のモチーフにしている。

<略歴> 2008年「: POCKET FILMS FESTIVAL」ポンピドゥーセンター フランス / 2017年「NOWJAPAN」LITEXPO リトアニア /
2017年「あざみ野こどもぎゃらりぃ」横浜市民ギャラリーあざみ野 神奈川 / 2021年「さよならギャラリー月極展」ギャラリー月極 東京 / 2021年 個展「シャリバテ」OKYAKU 高知

Instagram:@620mm 作家HP:https://www.ohrysbird.com/

[ INTERVIEW ]
Q1:ROOTS

父がイラストレーターの仕事をしていることもあり、絵を描くことが割と身近にありました。小さい頃はマンガ家の鳥山明さんが大好きでよく模写していたり、迷路を描いていました。その迷路と、今点々と線を描いている感覚はすごく近いものを感じます。またカルチャー的なルーツでいうと元々バンドをやっていました。高校生ではNirvanaのコピーバンド、大学生ではスカバンド、その後はロックっぽいビックビートっぽいファンクバンドっぽいバンドに変わっていきました。どのように今の作風に出ているかはわかりませんが、作画中に聴く音楽のテンションの影響は大きいです。

Q2:INSPIRATION

『Sasquatchfabrix.』へのイラスト提供をキッカケに、自然崇拝や山岳信仰へと興味を持ちました。そんな中、特に私の心を惹きつけたのは、趣味の登山で行く奥多摩や奥秩父の地域の神社でご眷属とされることの多いニホンオオカミや、高尾山に多く存在するテングの像。どちらも素敵な伝説や民話が残されており魅力的でした。登山に行った際は、常に景色や興味を持ったものスケッチしています。それが作品のインスピレーションの源になっており、今回の展示では、その両者に加え、コーヒー牛乳の瓶に書かれていた文字「富より健康」から着想を得てナイゾウをモチーフにしました。

Q3:EXPRESSION

アニメーションとイラストの製作では、考え方が違います。アニメーションはストーリーがありの見ている人が理解できるように辻褄を合わせていきます。絵が動いて何をしているか伝わるようにする、割とマジメな作業が多いんです。イラストの場合は、少し乱暴な言い方ですが「見る人が理解できるか」もそこまで意識しておらず、無理に辻褄を合わせなくても成立します。故にアニメーションに比べて「自由さ」があるように思えます。また下書きをして、たくさんの同じ絵を描くアニメーションと、下書きなしで一枚で完成させるイラストでは、そもそも脳みその使い方も違う感じがしますね。

Q4:DRAWING

イラストを描く際は、とにかくカッコイイ点々や線を描くように意識しています。そして、気持ちよく楽しく、よりプリミティブに。今回の個展では、そこにカッコよく透けた絵を入れました。普段のクライアントワークでは、「人に楽しんでもらうこと」を目的として考えているので、今回の展示のように作家として自分も楽しみながら描けることがすごく嬉しいんです。『Sasquatchfabrix.』のグラフィックの仕事をキッカケに、いろんなタッチを実験して、絵描くこと自体を楽しめるようになった今、その楽しい気持ちが、少しでも見た人に伝わり、楽しんでもらえたら嬉しいですね。