この度、OKYAKUでは、ギャラリー月極キュレーションによる桐本滉平氏による展示『漆の造形』を開催します。年末年始を跨ぐ展示ということもあり、桐本氏がリデザインした漆の酒器・重箱などを中心に、作家がバッグブランドSAGANとコラボレーションで制作した乾漆バック、作家の生家である輪島桐本の酒器類の展示販売を致します。 漆器の造形とは、木であり、竹であり、その素地が持つ形であって、漆そのものは液体であって形を持たない。作家の生家は、元々木地屋として長年輪島塗の形を支えて来た。一方で、張り子がそうであるように、紙や布のような造形的自由度は高いものの、それ自体では形を保持できない素材に、永続的な形を与えるのも漆である。これを乾漆と呼び、その造形的自由度の高さに作家は漆工の未来をみているのかもしれない。 そもそも、漆が木の樹液であること、それが旧来より人間の生活に密として寄り添って来たこと、そして、それが今、様々な素材が生まれ存在価値が薄れても尚、唯一無二の存在として脈々と受け継がれ、進化し続けていること、漆にまつわるエトセトラ。多視点的に漆の今を見て、触れて、感じられる展示になっています。是非、この機会に皆様にご高覧いただけますと幸いです。 本展では、年内会期中(12月26日~30日)作家本人が在廊で作品制作を行います。展示されている作品の制作過程を見ながら、作品に触れられる又とない機会です。合わせて、作家が独立当初より力を入れている金継ぎの注文もお受けいたします。割れてしまった大切な器など作家在廊中にお持ちください。 以下、作家コメント 漆とは何か。現代において広く知られる漆の活用は塗料としてであるが、幾度と塗り重ねられる過程は、もはや平面的ではなく立体的であるといえる。私は輪島という地でさまざまな漆芸品や職人たちと接するうちに、漆が持つ立体的な構造美に強く関心を持つようになっていった。歴史を振り返れば、日本人の祖先は九千年前の縄文時代に狩猟道具を作るための強靭な接着剤として漆を活用し始め、後に大麻や麻との融合により、装飾品や仏像をつくるようになった。漆は塗料として表面を覆う機能をもつ以前に、他の素材に寄り添い、交わり、硬化することで、造形を生み出す能力を持ち備えている。その能力に、私は同じ生命として、強い生命力を感じる。この時代における角度から、改めて漆の魅力を追求していきたい。 桐本滉平 漆芸家。石川県輪島市出身。江戸時代後期より漆器製造に携わり続けてきた桐本家の八代目として生まれる。父・泰一の元で漆器の営業を担当した後、作り手に転身。漆を主な原料とし、布、石、倒木、浮標などを用いて創作を行なっている。制作物は器に留まらず、バッグ、スピーカー、絵画など、国内外のブランド、アーティストとのコラボレーションにも取り組んでいる。