会期 : 2024年3月9日(土) – 3月24日(日) ※ 月火休廊
開場時間 : 13:00 – 19:00 (水/木/金/土/日)
入場 : 無料
会場 : 月極
住所 : 〒152-0001 東京都目黒区中央町1丁目3-2 B1
HP:https://tsukigime.space / Instagram:@tsukigime.space
主催 : Sasquatchfabrix. / yugyo inc.
この度、月極ではSasquatchfabrix.とyugyo inc.主催のもと、飯田団紅(だんこう)の初となる個展『春画展』を2024年3月9日(土)から3月24日(日)まで開催いたします。
本展では、作家の描く春画作品群を、平安時代より脈々と受け継がれる伝統工芸としての土佐和紙に印刷した連作を中心に、手描きの一点ものも展示されます。
現存する数少ない土佐和紙の漉き手である「浜田和紙」が、以下、作家からも述べられる「春画の再提出」ということばに呼応する形で、今春画を摺るべき紙とは、という問いに向き合い出した現時点での最良解である和紙。千年残る「春画」。数量限定で展示販売いたします。
初日は作家在廊(※時間は追ってアナウンス致します)で慎ましくオープニングレセプションを執り行います。入場無料ですので、お気軽にお越しくださいませ。
是非、この機会に皆さまにご高覧いただけますと幸いです。
と、展示の概要はほどほどに、飯田団紅氏による展示ステートメントをご一読くださいませ。
[Introduction]
あたくしは飯田団紅 ( だんこう )、通称・隊長だ。
うれしいことに贔屓にしてくれる人々が少々 いるが、まったくもって無名な男である。なのに『個展』を やることになったのは動乱の時代のバグだろうか ?
世の中がボタンを掛け違えた結果、一つ余った一番下のボタンがあたくしで、運 良く一番上の空いた穴に ねじ込まれる時が来たのかと思いきや、実際は気づかれずにポロンと落 ちただけの瞬間かも知れない。
あたくしがこれまで細々とおこなってきた物づくりの中で、平面的な意匠においては、何かに使 われるの を目的とするものが多い。例えば、衣類に摺られる意匠、文字、手ぬぐい図案、音楽に 関するジャケット やポスターの構成など。これは最後に組み立てられたときが『完成』であるか ら、『原画』や『素材』は、 当然ながらまだ形になっていないので見せるには値しない。音楽の 入っていない MV の断片映像みたい なものだからである。では、単体で成立するものを作ってこな かったか ? といえばあるにせよ、『さぁ ご覧あれ』と出すのは、あたくしの所属する『とある集 団』だけで充分だった。この集団は、アーティスト やミュージシャンを自称してないから素敵だ。なぜそれが重要なのか。近代以前までの日本の話しをしよう。 アーティストやミュージシャンという言葉に当てはめなかった時代、スキキライはあったにせよ、絵描き でも音楽家でもないのに庶 民が勝手にやっていた世界がある。お百姓が歌を歌ったり、笛を吹いたり、それが 公共に発せら れ伝播して混ざったりして長い間広がってきた世界だ。十年以上前の事、栃木の片田舎の 深夜の『太々神楽』で、お百姓の老人たちがくわえ煙草で太鼓を叩いたり、かすれた笛に聴衆からのヤ ジ があれば、演舞途中に舞台上から言い返すあの神楽の光景があたくしに輝いて見えた。同地域 には、 地芝居 ( 農村歌舞伎 ) の背景に使われた「両面の襖 ( ふすま ) 絵」が、幕末 ~ 明治から百 枚以上残って いるのだが、その襖絵たちは狩野派の絵と百姓の絵が混在しており、演者と聴衆の 境界線のなさに歓喜した。 西洋のパンクムーブメント含め、そんな落雷たちがあたくしを作ってき たから、物づくりにおいても、『アーティスト』『ミュージシャン』という肩書きはどうも違う世 界のことに感じてしまう。「所詮、アマだ道楽だ」という 評論はあたくしを止める事も反省させる事もできない。
近代は江戸時代を否定したはずが、結局その時代をちょこちょこ売りにしている。また、伝統や 文化と いわれるものがなくなりそうだから保存という型にしてきて百五十年、まったく月並みな 話題だが、本来 それら『デントウ』と呼ばれるものも生きていれば色々な進化をする。浮世絵や 春画の進化形としては、 現代情報との融合や安易な置き換えがある。しかしあたくしのような人 間は情報まみれであるし、今さらの 情報を入れる隙間がないほど満腹であった。上に触れた和楽 器集団いわく、「演奏しているのではなく和楽器に させられている」とうそぶくが、それは本当 で、自分のオリジナリティとは ? の苦悩などしゃらくさい。 衝動こそ生きる爆発。いっそ考えずに 素直に動いたとき、それまで思いもよらなかった自分の匂いが香り 立つ。寂しさは人を誤らせる が、衝動は人を立ち返らせる。それとまったく同じ。浮世絵や春画に「させ られている」のが今 回のあたくしだ。昨今嬉しいのは、何か依頼がある時に「~とはお話ししたものの、 あとは団紅 さんにまかせる」と言ってもらえることがほとんどになった。境界線を気にしないうちに何かを 身につけてしまったのかも知れない。
ということで今回のお題は『春画』。その依頼主は、『企画者』はもちろん、もうひとつ何を隠 そう『それ までの春画』からのささやきであった。『それまでの春画』があたくしに言う。「春 画を再提出しろ」と言って きたのだ。情報量では無く、想像量こそが新たな「春画」である。こ の絵の形はこちらからの覗き窓のようで、 実際は向こうに我々の心の内を覗かれて完成する。十 八禁も経験も衝動もおぬしの心中にある。
「春画」連作十三枚を用意した。
団紅
[Profile]
飯田 団紅(いいだ だんこう )/Iida Danko
東京出身。幼児期より絵を描き、特技とした。十代でパンクムーブメントに浸かり、1989年にはセックスピストルズのアートワークで有名なジェイミー・リードが来日した際、直接手ほどきとインスピレーションを受けた。原宿のパンクショップで働く中、1992年、ブランキー・ジェット・シティのファーストビデオのジャケットや意匠・図案制作として白羽の矢。一層、デザインとパンクを基本に過ごした。2000年初頭から三年間、ロンドンへ渡る。ロシア人女性とのユニットを組み、セントラル セント マーチンズ カレッジ オブ アートに潜入した。ホームレス期間には、ブリックレーンの路上で、シド・ヴィシャスの浮世絵や即席に作った服を売って生活。帰国後、いくつかの職種を経て、広告業界で修行。表現する物や行動が顕著に日本土着を探すようになっての2011年、東日本大震災を契機に、和楽器を使う集団「切腹ピストルズ」を結成し隊長を務める。ここでパンクからドロップアウト。野良着から始まる「忘れられた日本」の再編集・再提出と、生活・日常・景色に影響を及ぼす活動を軸に、近年では〈古くて新しい〉日本的意匠や図案なら団紅、人生や恋愛の相談、思想の講演、インタビュー依頼も多く、もはや何屋かも不明となった。栃木に移住して十一年。屋号「やかまし」、通称:隊長。
[問い合わせ先]
担当:有限会社ドワグラフ. 森田
電話番号 : 03 63 03 30 53
メール : dwagraph_morita@sasquatchfabrix.com